-vol.02-  Taroma Koshida, Natsumi Okimasu (TSUBASA)

 

― 今まさにMusilogue Music Showcaseに向けたレコーディング真っ最中のスタジオにお邪魔しました。今日はインタビューよろしくお願いします!

 

越田太郎丸(以下、越田):よろしくお願いします。ていうか大丈夫? 僕のこの曲たちは。

野崎良太(以下、野崎):ぜんぜん大丈夫ですよ! 僕もこれからちゃんとキーボートとか入れますし。なんだか順番が色々ちぐはぐで申し訳ないですけど(笑)。

越田:自分の曲だと客観的な判断がつかないというか…。

野崎:自分の曲だからこそわからないですよね。でも大丈夫です。ぜんぜん大丈夫です。

沖増菜摘(以下、沖増):これ、活字になるんですよね?

 

― そうですね。

沖増:食べながら話してても大丈夫ですかね…。

 

― モゴモゴ話してても活字では伝わらないので大丈夫です(笑)。

沖増:よかったです(笑)。

越田:(笑)

 

― おふたりがレコーディングで顔を合わせるのはほぼ初めてですか?

沖増:そうですね。

越田:音楽の仕事としてお目にかかるのは初めてですね。

沖増:でも私が一方的に太郎丸さんを見る機会は多かったですね。たとえばNAOTOさんのライヴとか

越田:NAOTOのライヴのとき現場にいたんだね。たしかにNAOTOとよく一緒にライヴしていて、彼女はアシスタントいうか、弟子として彼の現場によくいたはず。

 

― とはいえ、初めてとは思えないほど和気あいあいとしたレコーディングでした。

沖増:たしかに。

越田:それはきっと、なっちゃんの性格がなせる業ではないでしょうか(笑)。

沖増:人見知りしない性格ですので(笑)。

 

 

― 今回の企画では、太郎丸さんがプロデューサーとして音源やライヴをまとめる、というフォーメーションなんですか?

越田:僕の気持ち的には、プロデューサーはあくまで野崎くんですけど、曲は自分で書かせてもらって、ギターも弾かせてもらっています。ただ、あくまで野崎くんから「こういうメンバーでどうですか」とオファーをもらったのが企画のスタートです。

野崎:ミュージシャンてどうしても同じ面子で、同じ演目を繰り返すパターンに陥りがちですが、そこをなかば強制的に、いろんな面子を組み合わせてライヴをしてもらうのも面白いんじゃないかな、と思っていて。でもやっぱり、メインを誰かひとり置かないと成り立たない部分もあるから、今回は太郎丸さんにお願いしようと。そういう意味では、Musilogueという企画で、本当の意味でメインを置くのは今回が初めてかもしれません。藤谷(一郎)さんと栗原(健)くん(Musilogue Music Showcase第1弾の出演アーティスト)の場合は誰がメインということもなく、完全に見切り発車でスタートしてますので(笑)。

沖増:(笑)。

野崎:今回は太郎丸さんがメインで、そこになっちゃんが入ったら面白いんじゃないかと思って声をかけました。ドラムのカルタさん(大槻 "KALTA" 英宣)については「太郎丸さんと久々に一緒にやりたいです!」と連絡をもらって出演してもらうことになりました。ただ、本人はめちゃくちゃ忙しい人なのでなかなかスケジュールが合わない、という…。

一同:(笑)

野崎:ということで、今回のような機会に声をかけなければ、なかなか一緒にライヴをしよう!となる3人ではないと思っています。いまのみんなの活動を見ている限り。

 

― たしかにユニークな組み合わせですよね。

野崎:僕はとにかくECMが好きで、このレーベルや70年代のアメリカのジャズ・レーベルからは面白い作品がたくさん発表されていますよね。クラシック音楽と、新しい20世紀の音楽の大きな違いに「セッション」という要素が大きく影響していると思っています。特にECMにはあの強烈なオーナーがいて、彼がいろんなミュージシャンを組み合わせて演奏させたことで面白い音楽がたくさん生まれた側面がありますよね。もちろんミュージシャンの力量ありきですけど。

 

― Musilogueを通じて、そういったミュージシャン同士のケミストリーを体感できるわけですね。

野崎:今回から本格的に実験的な試みがスタートしたと言えるかもしれません。出来上がる音源も、すごく太郎丸さんらしい音に仕上がるような気がします。

 

― Jazztronikに限らず多くの弦楽器奏者と交流のある野崎さんですが、今回沖増さんをフィーチャーしようと思ったのはなぜですか?

野崎:今回、太郎丸さんの曲でなっちゃんが弾いたらすごく面白いんじゃないかな、と思って久々に声をかけました。

沖増:実は3年ぶり、ぐらいですよね。いまはSNSのおかげでそんな感じがしませんけど。よく考えたら、すごく久々ですね。

 

― 実際にレコーディングしてみていかがでしたか?

越田:いやー野崎くん、さすがのチョイスだと思いました。

沖増:よかったー。

野崎:なっちゃんはいろんなことをやっている人だから。そういう人じゃないと太郎丸さんの曲についていけないような気がして。弦楽器の演奏者を取り巻く環境って、一般的には譜面があって、それを完璧に再現するのが主流ですよね。それを一瞬でできる技術を持った人はたくさんいるけど、太郎丸さんの曲って、そこからプラスアルファのテクニックとか、ミュージシャン特有の味が必要とされる音楽だから。

越田:今日は念のためバイオリン用の譜面も書いてきたんですけど、この人だったら書いてこなくても大丈夫だったかもな、と思いました。

野崎:五線譜で曲をつくるようになって相当な年月が経ちましたが、いまや譜面で表現するのはある程度の限界が来ているのでは?と思うことがあります。これからはプラスアルファでもうひと味足すことで、新しい音楽の可能性が見えてくるんじゃないかな。

 

― なるほど。これからライヴ本番まで面白い化学反応がたくさん起きそうですね。ちなみに越田さん、沖増さんそれぞれJazztronikの作品とはどんな関わりがあるんですか?

越田:僕は『七色』とか、『Vamos La Brasil』に参加しています。

沖増:私は大学3~4年生のころにJazztronikの『CANNIVAL ROCK』を聴いて衝撃を受けたのが出会いです。こんな音楽があるんだ!と。私は広島出身で、東京に出てくるまでクラシック以外はほとんど聴いたことなかったんですね。バイオリンがいろいろやっていい、という意識もあまりなかったんです。で、「バイオリンでこういうポップなメロディーを弾いていいんだ!」と意識が変わってからはタンゴバンドを組んで世界中を旅行したり、いろいろトライしてきました。自分の同世代の人々に聴いてもらえる音楽をやりたくて若者向けのタンゴをやったり、そこからジャズ寄りの演奏をやってみたり。ライヴハウスからブルーノートやコットンクラブへも行くようにもなって。そうすると、これまでクラシック音楽を通じて身に付けた拍子だけだとついていけない音楽とか、譜面だけでなく感覚が要求される音楽に触れる機会が多くなって…。そうやって自分の表現の幅が広がっていったのかな、と思います。

 

 

― 今日は欠席ですが、大槻さんはどんなミュージシャンですか?

野崎:僕は太郎丸さんと同時期に知り合ったんですけど、ひと言で表現するなら「スーパードラマー」です。音もいいし、テクニックもピカイチです。

 

― 大槻さんも本当に幅広い分野で活躍されていますが、そういう意味では太郎丸さんも長くて濃いキャリアを重ねてきたミュージシャンですよね。

野崎:これは驚くべきことですよ。太郎丸さんの活動がなかったらJazztronikは存在していなかったかもしれない。

 

― そうなんですか!?

越田:本当に最初までさかのぼれば9歳のころ、自宅近くの教室でクラシックギターを習いはじめたのがスタートですね。中学ぐらいからはロック系のコピーバンドなんかも組んだりしつつ、近所の高校生にラリー・カールトンのレコードを聴かせてもらって「うまい!」とか思ったりしてました(笑)。高校時代はサッカー少年だったんですが、大学に入ってからラテン系の音楽サークルに入って音楽活動を再開しました。その時期にいまはスティールパン奏者の原田芳宏さんがガル・コスタとかジャヴァンの音楽を聞かせてくれたのがきっかけで、ブラジル音楽がどんどん好きになりました。で、大学を卒業するころにはちょうど小野リサさんが出てきて、「ああ、こういう人と一緒に演奏できるようになりたいな」と思うようになって。そこで、四谷にあるサッシペレレという、小野さんのお父さんがやっているブラジル料理と演奏を楽しめる店があるんですけど、そこでハコバン的に在籍しているブラジル人バンドに交じって演奏させてもらったりしてました。そこでは演奏するたび美味しい料理を食べさせてもらって、小野さんのお父さんには本当にお世話になりました。そこでブラジル音楽好きの若者とも交流するようになり、レコード会社からも声をかけてもらってつくったのがPrismaticaというグループで、1997年にアルバムをリリースしたんです。そしたら、それを野崎くんが聴いてくれてたみたいで。

 

― ここでつながるんですね!

野崎:最初は海外のアーティストだと思ってましたね。アルバム自体が大好きでよく聴いてたんですけど、太郎丸さんが参加した作品だと知ったのは、本人と知り合った後の話です。「Prismaticaって太郎丸さんが入ってるグループだったんですか!」と。それにしても早かったですよね。「Jazztronikはブラジル音楽とクラブ・ミュージックを融合させた先駆け」と評価されることもありますが、それよりもだいぶ前からPrismaticaがブラジル音楽とクラブ・ミュージックの融合をやってましたから。

 

― そんな越田さんはこれまでどんなアーティストから影響を受けてきたのですか?

越田:ブラジル音楽、特にトニーニョ・オルタはもちろんですが、トゥーツ・シールマンスも影響を受けたアーティストのひとりですね。ブルーノートとかでいろんなアーティストの演奏を聴いていて「すごい」とか「上手いなぁ」と思うことはよくあったんですけど、生まれて初めて「楽しいなぁ」と心がふわっと温かくなったのがトゥーツ・シールマンスのパフォーマンスでした。もちろん演奏はすごいし上手いのですが、それ以上に「あったかい」という印象があって。そこに唯一無二の魅力を感じたし、自分の演奏もそうありたいと思いました。

 

― 沖増さんはプロフィール上、学生時代までクラシック音楽のまさに王道を歩んできた印象を受けましたが、いまの音楽性に至るルーツとしてどんなアーティストに影響を受けてきたのですか?

沖増:幼少期からクラシックの作品をたくさん聴いてきましたが、なかでもギドン・クレーメルという、一般的には「変わっている」と評価されがちなアーティストなんですけど、この人が奏でるバッハにはとても影響を受けましたね。あとは(ヤッシャ・)ハイフェッツですね。彼はとにかく速弾きの人で「速く弾けるってカッコいい!」とすごく影響を受けました。私は「クラシックだからこうしなきゃいけない」という暗黙のルールみたいなものに違和感を感じていたので、クレーメルとかハイエフェッツのように、「上手い!」のなかに何か尖った表現を織り交ぜていく、個性を表現している演奏者を本当に尊敬しています。日本人なら古澤巌さん。「ヴァイオリンの夜」というアルバムには本当に感動しました。

野崎:ギドン・クレーメルが好きなんだ! 彼はECMでクラシック音源を発表している数少ないミュージシャンのひとりですね。

沖増:弾き方はクラシックなんですけど、本当にユニークな考え方のアーティストですね。

野崎:アルヴォ・ペルトという僕が大好きなエストニアの作曲家で、彼がECMから発表している作品のなかにキース・ジャレットとギドン・クレーメルが参加している音源があるんだけど、それも素晴らしいよ。

 

― 聞けば聞くほど個性的であり、根っこには同じ志を持ったメンバー編成ですね。

野崎:そうですね。通常こういう編成のバンドだとバイオリンは普通の子をフィーチャーしがちだけど、今回のなっちゃんがだいぶ「飛んでる」というか(笑)。

沖増:いやいやいや(笑)。

越田:むしろ僕がだいぶ普通に思えてきた(笑)。

 

― 今日のレコーディングから8月のライヴ本番まで、今回のメンバーがつくりあげる音楽がどう進化しているか楽しみです!

越田:ライヴって本人だけではできなくて、会場があって、お客さんがいて、お客さんからの影響で演奏も変化していくものです。そうやってお互いに刺激しあいながらつくりあげていきたいですね。ライヴ当日、オーディエンスと一緒にいい空間をつくりあげられたら大成功です。

沖増:とにかく、今回声をかけていただいたことがとても嬉しいです。野崎さんとは3年前にご一緒して以来久しぶりの共演で、しかも太郎丸さんまでご一緒させていただけるので。今日まで詳細は知りませんでしたが(笑)、おふたりからのお誘いだったら間違いない!と思ってましたので、今日のレコーディングからさらにイメージを膨らませて、いいライヴにできるよう精進します。あと、ライヴ当日に楽屋でパッタイを食べるのも楽しみ(笑)。

越田:僕はレッドカレーで(笑)。


TSUBASA

 

 

越田太郎丸(Taroma Koshida)/ Guitar

沖増菜摘(Natsumi Okimasu)/ Viloin

大槻KALTA英宣(Hidenobu KALTA Otsuki)/ Drums

野崎良太(Ryota Nozaki)/ Piano&key

鎌塚順二(Junji Kamatsuka)/ Remix

川原亮(Ryo Kawahara)/ Remix