-vol.03-  Saburo Tanooka, Kohsetsu, Hiromu Takahashi(The Rain of Secret Color / 秘色の雨)

 

― Musilogue Music Showcaseも今回で3回目。田ノ岡さんは前回(Vol.2)のアンコールでステージに飛び入り参加して演奏しましたね。

田ノ岡三郎(以下、田ノ岡): Musilogueはライヴも音源もすごくクオリティーが高いですし、CDのデザイン性も素晴らしいと思っています。前回のライヴを観に行ったときにこれまで発表された音源も購入しましたが、2つの作品は世界観が対局にあって興味深いです。 

 

― このインタビュー前のリハーサルが3人の初顔合わせということでしたが、それまではおもにグループチャットで交流していたんですよね? 

田ノ岡:グループチャットは盛り上がりましたね。恐る恐る自分が書いた曲をアップしたりして(笑)、ワクワク感を積み重ねてきました。僕たちでMusilogueの新たな側面を提案できればと思いますし、何はともあれこのプロジェクトに参加させてもらって幸せです。

高橋弥歩(以下、高橋):僕はツイッターでお二人とは早めに繋がっておきました(笑)。

田ノ岡:想像をいろいろ膨らませてめでたく今回のリハを迎えましたが、実際に音を合わせてみたら新しい発見ばかりでワクワクしました。 

紅雪:私はこれまでサックスとアコーディオンとのトリオ編成で活動していたことがあるので、「音が重なるとこうなる」というイメージがありますが、おふたりにとっては箏自体すごく珍しい楽器だと思うし不安もあると思っていたのでリハも最初は緊張して臨みましたが、実際に音を合わせてみると同じ編成でもまったく違う世界になって面白いですね。 

 

 

― 紅雪さんはフランスを中心に活動するサックスとアコーディオンのデュオ=Rhizottome(リゾットム)と活動されていましたね。

田ノ岡:私はRhizottomeの演奏を聴いたことがあったので、彼らと演奏していた方なんだなぁ、とお会いする前から紅雪さんのイメージを高めることができました。 

紅雪:ただ、人も変われば出てくる音も変わるはずなので「同じことはしたくない」という気持ちはあります。今回の3人ならではの音楽を追求していきたいですね。  

 

― 3人ではじめて音を重ねてみて、お互いどんな印象を持ちましたか? 

田ノ岡:まず箏という楽器との共演自体が初めてでしたので、実際に音を聴いて表現力の凄さを感じました。紅雪さんにしかできないことがたくさん詰め込まれているような気がしました。紅雪さんがつくった楽曲も素晴らしかったです。

 

 ― 今回はみんなで曲を持ち寄って作品にするスタイルなんですか?

田ノ岡:みんなで相談して、今回は3人の連名で作品をつくることにしました。全員で曲を書きます。それぞれのメンバーが書く曲ごとに、楽器の音色が劇的に変わってくると思うので楽しみにしていてほしいです。

 

 ― 高橋さんとのセッションはいかがでしたか? 

田ノ岡:高橋さんは爽やかですね。音色も人柄も。 

野崎良太(以下、野崎):面白いもので、ミュージシャンて見た目の感じがそのまま音になるんですよね。音に人柄が反映されるというか。たとえば栗原(健)くんなら、栗原くんの見た目の印象そのままの音になる。 

田ノ岡:栗原さんも共演者のひとりだと思っています。彼が描くCDジャケットの絵も重要で、作品の世界観のひとつだと改めて感じました。CDは楽曲の内容と同じぐらいデザイン性も大事だと思っていますので、栗原さんの絵をあらかじめ観ながら演奏できるのは幸せです。高橋さんの楽曲を演奏するのも楽しみですね。とても爽やかで。 

高橋:ただ、最初はとても爽やかだったんですけど…。 

野崎:爽やかな楽曲を僕が暗黒にしてしまいました(笑)。

一同:(笑)

野崎:「こうしなきゃいけない」という枠をとっぱらうというのもMusilogue というプロジェクトの重要な部分なので、弥歩くんが書いてくれた爽やかでカッコいい曲を「コード進行いらないよ。5分間ずっとDマイナーでいいよ」 と修正した、という。

高橋:(おふたりがこれほど即興演奏に長けているとは知らなかったので、) はじめは自分が書いた曲は決めごとを全て楽譜におこし、ガチガチに構築し ていました。ただ今回はもっと余白を楽しめるコラボレーションになりそうですね。 

紅雪:田ノ岡さんは演奏技術がとにかくすごくて音色もきれいで。そして箏 を知ろうとしてくれているなと感じました。つくってくれた楽曲も箏のメロ ディーラインを意識してくれているというか、すごくかわいらしくて私にとっては新鮮でしたし、新しい挑戦になりそうです。弥歩さんの演奏は音色に透明感があって、すごく素直な感じがしました。 

高橋:でも今日のリハを踏まえて、どんどん暗黒になっていくかもしれません(笑)。 

野崎:田ノ岡さんにも「そういうバッキングじゃなくていいと思います」とか言ってみたり、今日はいろいろ話しましたね。  

 

 

― ちなみに、野崎さんは今回どんな立ち位置で参加するのですか? 

野崎:観客です(笑)。

 

 ― 観客にしては踏み込んだ指摘をしている気が…(笑)。 

野崎:口うるさい客です(笑)。ミュージシャンはメロディーを奏でるのが自然な動作で、特に日本人はA→B→C→Dとすべてメロディーで構築された楽曲を好む傾向にありますが、それは必ずしも正解ではないという気がしていて。もっと漠然と、テーマひとつあったらそれで5~6分の楽曲を成り立たせることができる、というのもミュージシャンの力量だと思います。ただ、自分で演奏しているとそうやって俯瞰で評価するのは難しいから、今回は僕が3人の演奏を客観的に聴き、率直な意見を言う作業が大事だと思っています。 

紅雪:私が演奏する13絃の箏は転調が難しいので、これまでワンコードで演奏する機会は多かったのですが、逆にそれだけだとつまらないと思っていて。おふたりとは逆のアプローチで面白い要素を足していきたいですね。

野崎:ジャズの名曲でも2コードぐらいで成り立っているものがあったりするからね。今回のメンバーは「クラシックだけの人」ではないから、やっぱりある程度の即興性は残しておいたほうがいいと思う。 

田ノ岡:そのうえで、予備知識のないお客さんにも感動してもらえる演奏がしたいですね。 

高橋:田ノ岡さんは間違いなくリーダー的存在というか、今日のリハもまとめていただきました。アコーディオン奏者との共演は初めてですが、すごく楽しみです。僕は音大の集中講義で箏を習ったことがあるので、箏奏者というと「ひたすら伝統的なことをやっている人」というイメージでしたが、紅雪さんは奏法を含めかなり独自の工夫をしていて、その点にとても感銘を受けました。ぜひライブで観て、聴いてもらいたいと思います。 

 

― 個人的にも楽しみです!では続いて、みなさんの音楽的なルーツや変遷について教えていただけますか? 

田ノ岡:私は音大時代に作曲コースを専攻しつつ、ジャズ研に所属してピアノを弾いたりしていました。卒業後、いろいろなバンドを掛け持ちして演奏することの楽しさに目覚めていくうちに「鍵盤できるならアコーディオンもできない?」と相談されることも多くなって。で、試しにアコーディオンをお借りして弾いてみたらすぐにハマってしまったというか、「自分に向いてるな」という感覚がありました。始めて3日ぐらいでカタチになったな、という確信もあったし。

 

― 運命的な出会いですね。 

田ノ岡:そのまま8年ぐらい演奏し続けたところで、今後もずっと演奏し続けたいという決意を込めてフランスへ渡り、ミュゼットアコーディオン奏者として知られるダニエル・ゴランのところに2週間住み込みで修行しました。そこが第二のスタートラインでした。一生をかけて高め続けられることとして出会ったのがアコーディオンの演奏だった、ということですね。 

 

― ご自身の音楽的なルーツは? 

田ノ岡:ありとあらゆる音楽を聴いてきたので、何かに絞って「ルーツ」と呼ぶのは難しいです。たとえばブラジル音楽ならシヴーカとか、さまざまなミュージシャンのスタイルを採り入れて、自分なりに昇華してきたからいまがあると思っています。 

 

― 紅雪さんが箏に出会ったのはいつ頃ですか?

紅雪:私は母に習って、幼少期から箏に触れていましたが、ちゃんと先生について習いはじめたのは小学校5年生ごろからになります。

 

― 生まれた時から箏に触れられる環境ではあった、ということですね。

紅雪:でも小さい頃はピアノのほうが好きでした。箏の演奏が面白いなと思うようになったのは大人になってからですね。電子音楽や現代音楽、あとクラブミュージックなどいろいろな音楽を聴くようになって、ピアノだと黒鍵と白鍵の間にある音が、箏だといかようにもつくれる、というのが私にとってはすごい発見で。そこから本格的に箏の演奏にハマりました。

野崎:イギリスに留学していたんだよね? 

紅雪:大学時代、どうしても行きたくてロンドンに留学しました。演奏家になるためではなかったのですが、ロンドン大学の民族音楽学科にいたのでいろいろな国や地域の民族音楽家とセッションしたり、世界各国のミュージシャン交流できました。とても刺激的な環境だったし、日本にいてはできなかったミュージシャン同士のつながりができましたね。それまで日本では尺八、三味線、というのがセッションの定番でしたけど、ロンドンに留学したのがきっかけにパッと弾けたというか。海外のミュージシャンとセッションする課程で奏法やスタイルを考えて、考えて、従来のスタイルに縛られない自分の演奏が身についていったと思います。

 

― ロンドンで一気に表現の幅が広がったんですね。 

紅雪:音楽家、演奏家としてどれだけ自由になれるか。古いものを大切にしつつ、いままで築いてきたものにあぐらをかかず新しいことに挑戦していきたい、という思いはありますね。紅雪を名乗ろうと思ったのも、そういう思いがあってのことです。 

 

― 高橋さんはいつ頃から音楽に触れてきたのですか? 

高橋:中学時代に吹奏楽部に入って、そこから大学まで基本的にはクラシック畑で育ちました。その後入学した国立音大でさかんだったビッグバンド(ニュータイドジャズオーケストラ)がジャズとの出会いでした。 

 

― いまはどこに活動の軸足を置かれているのですか? 

高橋:いま自分が使命感をもってやらなきゃと思っているのはポップスの演奏です。近年ポップスの世界では予算の関係等でサックスやブラスセクションの音を使ってもらう機会が減ってきている事もあり、ポップスの曲中で生楽器の音をもっと知って欲しいという思いは強いです。で、そういう思いが強くなってくるとジャンルとか関係なく、それこそ今回の野崎さんのように声をかけてくださる方も増えてきました。今回のMusilogueでの演奏や制作での経験は間違いなく自分の糧になると思いますし、こういう経験をポップスのフィールドに活かしていければと思っています。 

 

― 本当に多様なバックグラウンドを持った3人がMusilogueという企画を軸にセッションするわけですが、最後にライヴにかける意気込みをお聞かせください。 

紅雪:正直どうなるかまったく未知の状況ではありますが、3人のセッションがすごく新鮮で楽しくて。ライヴ当日はぜひサウンドの絡みの美しさを感じてほしいです。きっと驚かれると思います。 

高橋:演奏の瞬間ごとに考える余白を大切に、本番で爆発出来たらいいなと思います! 

紅雪:和楽器なので音数が少ないとかいろいろ制約もありますが、制約を制約だと思うと音楽が広がらないと思うので、構築された楽曲と即興演奏のバランスをとりながら、みなさんとつくり上げていきたいと思います。 

田ノ岡:即興といえども各人の楽曲を演奏している、という感覚はあると思います。個々のメンバーがつくった楽曲の個性を殺さずに、それでも各楽器の個性がにじみ出るようなセッションになると思うので、そういった部分も楽しみにしていてください。 

野崎:3人はまだ会ったばかりなので、いきなり阿吽の呼吸というのは難しいと思います。でも、会ったばかりだからこそ相手の手の内をそれほど深追いせずに演奏できる、というメリットもあるから、この状況をうまく利用して表現してほしいですね。あとは3人の連名で作品をつくる以上、自分らしさを表現しつつ、ふだんの自分ではできないような実験やチャレンジをして、自分の型から逸脱できるかも重要ですね。


秘色の雨

 

 

 

田ノ岡三郎(Saburo Tanooka)/ Accordion

紅雪(Kosetsu)/ Koto

高橋弥歩(Hiromu Takahashi)/ Sax