-vol.05-  Frog of fog (Frog way back)

Musilogue第5弾は"Frog of fog" 真砂陽地(Tp)、狩野丈二(Dr)、井上新(Gt)、田中和音(Pf)、石原雄介(Ba)。

 

― Musilogue Music Showcase第5弾アーティストとして結成されたバンド=Frog of fogですが、まずは自己紹介がてらみなさんの音楽的なルーツも含めてプロフィールを教えてください。最初はトランペット担当で今回のバンドリーダーでもある真砂さんから…。

 

真砂陽地(以下、真砂):僕は小学生のころにピアノを始めたのが音楽に触れたきっかけです。家族みんな音楽が大好きで、クラシックも聴くし、家では季節によってビートルズや山下達郎さんの曲などいろいろなジャンルの音楽が流れていました。トランペットとの出会いは小学校で始めた吹奏楽です。そこからずっとクラシック漬けでしたが、音楽大学へは行かず、一般大学でビッグバンド・ジャズのサークルに入って音楽を続けていました。で、そのサークルの先輩がたまたまプロだったこともあり、音楽の世界に入りました。好きなアーティストはロイ・ハーグローヴ、ジェイムズ・ブラウン、プリンス、パット・メセニーとか…いろいろですね。ただ、影響を受けているのはラッパ吹きじゃない人がほとんどですね。ライヴへ行くのもほとんどがトランペット以外の演奏者だったりします。

 

 

― 真砂さんは日本発のファンクバンドとして知られるオーサカ=モノレールにも在籍していたんですね。

 

真砂:昔からブラック・ミュージックが好きで、ライヴ映像とかもよく観ていたんですが、たまたまオーサカ=モノレールでトランペットに空きがあるタイミングに恵まれて、2011年から2014年ごろまでの約3年間在籍していました。バンドでは海外ツアーもやらせてもらって、向こうのバンドと一緒に演奏するなど本当にいい経験をさせてもらいました。(オーサカ=)モノレール以降はアーティストのサポートとか、レコーディングとかも経験したいと思って、ずっとフリーランスで活動しています。僕が書く曲ってすごくクラシカルなものもあったり、ブラック・ミュージック寄りのものもあったりと、ちょっとトリッキーな曲が多いかもしれませんが、その背景には僕のミュージシャンとしての成り立ちがそのまま反映されているし、今回のMusilogueでも、そういう自分の表現ができてよかったです。

 

田中和音(以下、田中):僕は父親がジャズ・ピアノをやっていた影響で、気づいたらピアノを弾いていた、というか。

一同:ヒュ~!!(笑)

真砂:カッコいいねぇ~(笑)

田中:(笑)そんなことはないんですけど、子供のころから地元のピアノ教室に通いはじめて普通にピアノを習いだして。父親の影響もあって楽しそうだな、という思いもあり、小5からジャズ・ピアノの勉強を始めました。

狩野丈二(以下、狩野):小5から!? 早いねぇ。

田中:いまの活動の中心は誰かミュージシャンのサポートとか、誰かの譜面を書くことですね。大阪の音楽大学でポピュラー音楽を学んだこともあり、演奏だけじゃなくて作曲やアレンジもたくさんやっています。

 

 

― ギターの井上さんはMusilogue Music Showcase第1弾からサポートとして参加されていますが、今回いよいよバンドメンバーとしての登場となりますね。

 

井上新(以下、井上):Musilogueのこれまでの作品では、完成された楽曲を聴かせてもらってあとからギターを乗せる、という参加の仕方でしたが、今回は最初から制作に参加させてもらっています。ただ僕はジャズマンじゃなくて音符も読めないし、高度なコードの解読には時間がかかったりもして…。

一同:高度なコード…(笑)

田中:ぶっこんできましたね(笑)

 

 

― なんだかすでにバンドとしての一体感がありますね(笑)。井上さんが演奏活動をスタートさせたきっかけは?

 

井上:1980年代前半、僕が中学生のころに、ギターとかドラムマシーンとか、テープの磁気を消す機械とかオープンリールをもっているマニアックな同級生がいたんですけど、その友達に影響されてギターを始めました。その当時はふつうに80's音楽とか聴いてましたね。野崎(良太)くんとは90年代から知り合いなんですが、きっかけは私の大学の友人で、いまは敦賀でTreeというお店のオーナーでありDJのチカシ(西脇ちかし)です。彼を経由して、クラブでハウスとかアシッド・ジャズを聴いた耳でジャズに触れて今に至る、という感じですね。野崎くんには面白がってもらってよく声をかけてもらってますけど、僕はもともとジャズ畑の人間ではないし、通常のジャズ・ギター的アプローチとはぜんぜん違ってエフェクターを使いまくって表現する、というちょっと変わったスタンスだからなのかなぁ、と思っています。

 

石原雄介(以下、石原):僕は最初ロックで、第二次バンドブームの終わりかけというか、ジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))とかブルーハーツ(THE BLUE HEARTS)とか、X(現X JAPAN)とかが音楽的な原体験ですね。当時、演奏にはぜんぜん興味がなかったんですけど、友達からの誘いもあってノリでバンドを始めてみて…という感じですね。しかも最初はドラムだったんですが、自宅では練習できないのでベースに転向しました(笑)。最初はXから、洋楽ならガンズ&ローゼスなんかも聴いていたんですど、バンドのメンバーも「それだけじゃ面白くないから」ということで当時流行っていたジャミロクワイからアシッド・ジャズを聴きだして。で、同じバンドの友達がバークリー(音楽大学)へ行きたい!と言い出したので、それなら僕も行きたい!と(笑)。そこでバークリーを受けるために日本の専門学校へ通ったんですけど、そこではじめてエレキベースからウッドベースを弾きはじめて、そこからジャズがますます好きになりました。そこからはジャズ一辺倒ですね。あと、僕がボストン(バークリー音楽大学)にいたころは小澤征爾さんがボストン交響楽団の音楽監督を務めていて聴く機会が多かったこともあり、在学中にクラシックも大好きになりまして、帰国後に日本でクラシックの勉強をやりなおしました。ジャンルにこだわらず音楽はなんでも好きで、今回のMusilogueでの演奏はまさにツボでしたね。

 

狩野丈二(以下、狩野):僕はたぶんバンドメンバーのなかで最年長ですね。50歳。

真砂:僕は31歳だから…。

 

 

― とても年齢の幅が広いバンドなんですねぇ。

 

狩野:音楽的なバックボーンとしては母が三味線の師匠でして、それもあって僕に音楽をやらせたがっていた、というところまで遡るかな。小学校ではエレクトーンからトランペット、中学校ではブラスバンドに参加していたのですが、トランペットの横にあったドラムにも興味がわいてきて。バンドを組みだしたのもこの頃からですね。野崎くんとの出会いはまだ彼がJazztronikをひとりでやっていたころで、ファースト・アルバムを出してライヴをやりたい、というときに呼んでもらったんです。そこからレコーディングやライヴにちょこちょこ呼んでもらっていました。ただ、僕が本当にメインだと思っている活動はストリートでの演奏です。おもにトリオ編成とかでストリートで演奏しています。ライヴハウスで演奏するとなると大変になる集客とかにも縛られないし、むしろストリートなら本気で演奏すれば人も集まってくる。おまけに手作りでもアルバムとか音源があれば買ってくれるお客さんがたくさんいたので、ここでいいじゃん、と(笑)。

 

 

― Frog of fogのアルバム『Frog way back』で聴かせるドラムは本当にタイトでファンキーで、強烈な印象を残してくれました。

 

狩野:「ジャズは仕事」という思いがあるからか、僕はふだんほとんどジャズは聴いてないんです。実は生粋のパンクスで、パンクからファンクに音楽の趣向が移り変わってきたような身なので、そんな自分の流れやスピリットをジャズ経由で表現できればいいな、と思って演奏しています。今回も単なるジャズのドラムというよりは、バンドの音にいい意味で違和感を加えていければいいなと思っています。

 

 

― 聞けば聞くほど個性的な面子が集ったFrog of fogですが、メンバーのまとめ役としてかなり大変な思いもした、と聞きましたが…。

 

真砂:僕にとっては、とにかく初めてのことだらけで…。本当に面白いプロジェクトだけど、どうしたらいいかわからない、という状態でした。しかも最初は勝手知ったるメンバーでバンドを組むと思っていたのですが、そうじゃないんだ!と(笑)。知らない人と一緒に演奏する、という経験がほとんどなかっただけに「今回は大変そうだな…」と最初は不安でした。でも野崎さんと打ち合わせしたときに言われた「勝手知ったるメンバー同士でやるのもいいけど、そういうメンバーでライヴをしても〈いつもどおり〉以上のものにもっていくのが難しい」という言葉にピンときたんです。たしかに気心の知れたメンバーなら心地よく演奏できるけど、そこから新しい何かは生まれないかもしれないな、とそのとき思いました。ライヴを観に行っても内容が想像の範囲内、では面白くないな、と。そこに気づいたとき、今回のプロジェクトがめちゃくちゃ面白そうだと思えるようになりました。

 

 

― なるほど。ちなみにバンドメンバーがはじめて集まったのはいつごろですか?

 

真砂:はじめて集まったのは(2017年)10月の頭で、その次の週にはレコーディングでした(笑)。

狩野:野崎くんから「トランペットのリーダーがとても不安がっているので前もって会っておきますか?」と提案してくれたんですけど、予定が合わなくて行けませんでした(笑)。

 

 

― 真砂さんのほうであらかじめ書いた曲をもってリハに臨んだんですよね?

 

真砂:そうですね。ただベースラインやドラムの部分はアバウトにしておいて、曲のイメージだけは伝えて「あとは思うようにやってみてください」と。管楽器ばかりやってきた人間にとってみては説明の難しい部分だったのですが、そこをリズム隊のみなさんがうまいこと噛み砕いてくれました。

 

 

― 最初からこういうアルバム、こういうライヴにしたいみたいなイメージはあったのですか?

 

真砂:ありましたけど、正直その時の想像とはぜんぜん違うものに仕上がりました。当初はもっとおとなしい感じになるかなと思っていたんですけど、実際につくっていくとライヴでの爆発ぶりが目に浮かぶようなアグレッシヴさで(笑)。

狩野:たしかに最初はおとなしいというか、まさに正統派のジャズという印象だったかもしれないね。

石原:僕はみなさんとお会いする段階までまったく情報がなかったので…。誰が曲をもってくるかもわからなかったし、そもそも曲をみんなで持ち寄るのか、その場で即興するのかも含めてまったく未知数でした(笑)。

野崎良太(以下、野崎):これまでのMusilogueでもほぼそういう流れですね(笑)。

 

 

― それはスリリングですね(笑)。

 

石原:ただ、やってみれば作品のイメージを全員がすぐに共有できたので、そこからの演奏や制作はスムーズに進行したと思います。 

 

 

― それでも作品をつくっていくなかで苦労した点はありましたか?

 

野崎:何かあっても、新さんがギターできちんとまとめてくれるから大丈夫(笑)。

井上:いやいや不安だらけでしたよ(笑)。真砂さんがつけてくれたギター用のコードを持ち帰って、研究して。そのうえで自分が発する音が他のパートの音とぶつからないように最低限のバランスをとる…。そんな試行錯誤の連続でしたね。僕は他のメンバーと違ってジャズという共通言語を持たない人間なので。

真砂:いやいや、新さんの音にはめちゃめちゃ安心感があります。僕らだけでは足りない音域を覆ってくれるというか。

野崎:新さんはとても勘がとても鋭いんですよ。パッと聴いたときに選ぶ音、コードとコードの間にある共通音を見出すのがとっても早い。でも、きっと本人的には野生の勘なんだと思います(笑)。

井上:さすが野崎くん、わかってますね(笑)。

狩野:若手ふたりが真面目に取り組んで、僕と新くんは不真面目ではないけど、どちらかというと飛び道具的な役割を担っている。で、その間でどうしようかと困っているのが真砂くん、という構造ですね(笑)。

野崎:そうですね(笑)。でも、そこがいいところで。あえてそういう面白い組み合わせで演奏するのが大事だと思っています。それに若手ふたりにとってこれまでにない体験であると同様に、新さんにとってもバリバリのジャズマンと共演する機会はあまりないはずですよね。

井上:そうですね。こういう機会がなければなかなか一緒に演奏することはないですね。異世界という感じ。

野崎:これはMusilogueというプロジェクトなり発表する作品のテーマでもあります。なるべく〈いつもどおり〉ではない組み合わせで、どこまでの作品に仕上がるか、という。

 

 

― 出来上がったアルバム『Frog way back』の仕上がりはいかがですか?

 

真砂:自分で言うのもアレですけど「めっちゃええやん!」て思いました。イメージ以上の仕上がりだったので本当によかったです。

野崎:本当に素晴らしい仕上がりだと思います。そして、今回はこのアルバムを1枚のパッケージとして発表するけれど、ここが完成形ではなく、むしろひとつの過程として捉えてほしいとも思っています。このバンドに限らず、さまざまなミュージシャンとセッションを重ねていくことでいろいろ掴んで、変わっていくこともあるだろうし。Musilogueでは、そんな感じでミュージシャン自身が好き放題やってくれればいいと思うし、そういう場であってほしいですね。

真砂:なるほど。

野崎:あと今回はバンド名義のアルバムでありライヴなので、バンドとしてどういう個性を発揮できるかも大事ですよね。ただ、そこは新さんがいるから大丈夫かな。本人はあんまり自分の重要性をわかってなさそうですが(笑)。

井上:いやぁ僕は食事にたとえればパセリとかパクチー、クミンみたいなスパイス的存在なので…。

真砂:いやいや、僕は油ぐらいに不可欠な存在だと思ってますよっ!!


Frog way back

 

 

真砂陽地(Yochi Masago)/ Trumpet

狩野丈二(George Kano)/ Drums

井上新(Arata Inoue)/ E.Guitar

田中和音(Kazune Tanaka)/ Piano

石原雄介(Yusuke Ishihara)/ Bass