-vol.06-  BRASSIC (Patina of Brassic)

 

― 今回はMusilogueのインタビューとしては初めて、ライブ後のメンバーの方々にいろいろお話を伺うことになります。

近藤淳也(サックス/以下、近藤):今まではライブ前の取材だったんですか。

野崎良太(以下、野崎):そうか、そう言えばそうでしたね。

 

― ということで、インタビュー初登場のメンバーには自己紹介を含めて、BRASSICとして初のライブを終えた感想からお聞きしたいな、と。私は残念ながらYouTubeでアーカイブを拝見しただけなのですが、オーディエンス含めてとってもテンションの高いライブで最高でした!

近藤:2016年ぐらいからJazztronikのビックバンドに参加することで野崎さんとつながって、その流れでBRASSICにも誘っていただきました。ライブの感想はですね...ライブの感想というよりは、もうMCがちょっと面白すぎてですね。

栗原健(サックス/以下、栗原):むちゃくちゃでしたね(笑)

 

― YouTubeでは全部カットされてましたねぇ(笑)

近藤:たしかにあれは、ライブでのお楽しみにしといたほうがいいかもしれないです。

 

― ライブ行きたかった...。

近藤:僕自身もともとDirty Dozen Brass Bandのような編成での演奏にはすごく興味があったんです。自分が所属しているFIRE HORNSではバンドにエレクトリックな楽器を入れてやったりしているのですが、BRASSICのような基本アコースティックの編成でのアレンジもやってみたいな思っていただけに、レコーディングを含めてすごく面白かった。

 

― 続いてはスーザフォンの平木真由子さん。ドラムの大竹重寿さん(Cro-Magnon/今回のインタビューは欠席)とともにBRASSICの屋台骨を担っている、ともいえますね。

平木真由子(スーザフォン/以下、平木):スーザフォンとの出会いは大学一年生のころです。サークルの新歓でニューオリンズ・ブラスバンドのパフォーマンスを見て「自分もやってみたい!」と思ったのがきっかけでした。

近藤:そのへんの話は僕もすごい興味あるなぁ。

平木:中学と高校ではバイオリンをやってたんです。

近藤:えーっ!それは衝撃です。

野崎:中高でバイオリンをやっていて、なんでスーザフォン!? ていう。

近藤:すごい。

平木:自分は前に出る楽器より、後ろで目立ちたいって思います。

近藤:後ろで目立つんだ。後ろで支えたい、とかじゃなくて(笑)。それ、すばらしい!

 

― 実際、ライブもそんな感じだったんですか。「後ろで目立つ」的な。

野崎:そもそも楽器自体、相当大きいからね。

近藤:演奏者が踊らなくても、何もしなくてもお客さんの目には絶対に飛び込んできますからね。

 

― 平木さんはBRASSICのメンバーとして演奏してみていかがでしたか?

平木:もう本当に「なんでこんなにMCがうまいんだろう。さすがだな」って思いました。

近藤:MCの印象が強すぎる...。

 

― 少しは曲の話もしましょうよ...。

真砂陽地(トランペット/以下、真砂):いやいや、MCの話だって重要なんですよ。

栗原:そうね(笑)

近藤:僕たちの楽器はピアノやギターとは違ってひとりで1音しか出せないから、和音を出すには全員で演奏しなくてはいけない。そこに加えてテーマを吹いて、おまけにソロまで演奏する、という割とハードな役回りなんです。管楽器はもう体力勝負で、体力がなくなることは音が出なくなることを意味するので、ライブ中でも体力をチャージする時間がある程度は必要なんです。

 

― 切実な問題だったんですね!

近藤:あと、僕らが疲れる=お客さんが疲れちゃうっていうところもあるんですよ。管楽器ってやっぱり音が強いというか、立つんで、ずっと鳴っているとお客さんも疲れちゃうし、サウンドにも飽きてしまうんじゃないか、という気がしていて。だからメリハリをつけるためにもMCを入れたり、みんなで歌うシーンを挿んだりすることで、BRASSICの編成としてのブラス要素が際立つとも思っています。エンターテインメント性も高まりますしね。

栗原:そうね。ただ、そんななか平木さんは一度も「疲れた」って言わなかったよね。

 

― ただでさえ大きな楽器なのにすごいですね。

野崎:これはBRASSIC結成のいきさつにもなるんですが、栗原くんと某所で飲んでたときに「海外ではドラムとブラスだけでバンドでやる人たちが増えてきていて、そういうことを日本で僕たちでもやれないかな」なんて話していて。

 

― いかにもMusilogueらしい結成のいきさつだ...(笑)

野崎:ただ「低音の楽器が足りないから、たとえばスーザフォン吹ける人とかいないかな」と話してみたら、栗原くんが「いや、いるよ」と、平木さんを紹介してくれました。Jazztronikでもビックバンドをやっているから管楽器のミュージシャンは周りに沢山いるのですが、スーザフォンは僕としても未知の楽器で。だからこそ何か新しいものが作れそうだなと思って参加してもらいました。

 

― なるほど。ではライブに先立って制作されたアルバムについても聞かせてください。今回は11曲入りのアルバムということで、Musilogueシリーズのなかでも最大級のボリュームとなりました。

野崎:採用されてない曲もあるから、たぶん全部合わせたら20曲以上あるはず。

 

― すでにそんなにストックがあるんですね!

栗原:曲がすっごく増えたので、ホワイトボードに書き出してアルバムに入れる曲を吟味してました。

近藤:そうそう。BRASSICは誰かがリーダーやバンマスっていう感覚はなくて、メンバーみんなが作曲者としてのアイデアとか意思があって、それを核にしてみんなが曲を持ち寄って、アレンジして作品を作り上げていったイメージですね。

 

― ちなみにレコーディング期間はどれくらいだったんですか?

栗原:2日。

真砂:2日でしたね。

野崎:Musilogueで作品を作る時のデフォルトです(笑)

 

―(笑)

栗原:おしゃべりしてたら終わっちゃうんで、真砂くんがタイムテーブルを組んでくれて。

近藤:そうそうそう。

真砂:1曲につき1時間半でレコーディング、というタイムテーブルでしたね。

野崎:今回はさすがにきつそうだった(笑)

 

― でも結局、11曲録りきったわけですもんね。

栗原:そうですね。ライブと一緒で管楽器は体力勝負だから。

真砂:短時間で集中してやりきる、という流れはよかったかも。

※ここで途中参加の前田大輔(トロンボーン/以下、前田)が取材現場に到着。

栗原:前田さん、お疲れさまでした!

近藤:いやー充実の時間でしたね。

真砂:そうですね。もう帰りましょう。

近藤:じゃあ帰ります。

前田:ほお...そんな流れですか。そうですか(笑)。

一同:(笑)

真砂:何の話してましたっけ(笑)

 

―(笑)。せっかく前田さんも来てくれたので、改めてライブの感想をお聞かせいただければ、と。

栗原:なんか必死でやった感じはあるよね。

前田:必死やったね、たしかに。こんなバンドはなかなかないですよね。編成といい、ジャンルといい...。このバンドの音って、ジャンルだと何になるんだろうね?

野崎:ファンクかなぁ。

前田:うん、ファンク。

近藤:そこにプラスして「これまでにない何か」という感触はあります。

野崎:僕がもともとMusilogueでこういう編成のバンドをやりたいと思った理由のひとつに、日本にも管楽器奏者は沢山いるのに、出てくるバンドの編成とかは似たものが多いな、という思いがあって。で、これまでとちょっと違うものを聴きたいな、と思っていた時に海外で新しい音がどんどん出はじめた、という流れがあります。日本のミュージシャンでも新しい事が出来るんじゃないかと思ったのですが、僕は管楽器が出来ないから(笑)。そういう時は人を集めてやってもらうしかない。

 

― 今回に限らずMusilogueの活動を追いかけていると、いつも「日本にはこんなにも面白いミュージシャンがいるんだ」と驚かされます。

野崎:これまでMusilogueで発表した琴とか尺八をフィーチャーした作品は海外の人にとってすごくわかりやすいらしくて、すでに向こうのラジオで流れていたり、評価もされています。ただ、BRASSICのサウンドはすでに海外で定着しつつあるものなので、そこに日本のミュージシャンがどう切り込んでいくのか。僕はプロデューサー的立場で、みんなにチャレンジしてもらいたい、という思いがすごくあります。

 

― そういう意味では、これまでよりもチャレンジのハードルがちょっと高めかもしれませんね。

野崎:「誰かみたいな演奏をしたい」とか、教科書通りのジャズを演奏するだけなら上手な人は沢山いるけど、オリジナリティあふれる演奏をする事に苦手意識を感じている日本のミュージシャンはけっこう多い気がしていて。そんな中、手前味噌ではありますがBRASSICの作品にはすごくオリジナリティがあって、僕としてはすごく面白いアルバムに仕上がったと思っています。

 

― 私も個人的に、BRASSICの作品からある種の自由さ、風通しの良さを感じました。

前田:うんうん。間違いなくそうですね。

野崎:最初のとっかかりとしては僕が強引にやらせた側面もあるけど(笑)、BRASSICとして1枚のアルバムが出来上がって、みんなが「なんか面白かったな」って思ってくれたんだったら、もう1枚、もう2枚と続けていってもらえると嬉しいですね。そうする事で「こういうジャンルが出来上がったんだな」みたいに、世の中で認知されてくるだろうし。だから、僕としては1回で終わってしまうのはもったいないと思っています。

 

― そうですね。

野崎:今回の成果を踏まえて「次はこうしてみたい」とか、例えば前田さんとか近藤くんとか平木さん、そしてもちろん他のメンバーにも思いが芽生えるだろうから、そこからアイデアを広げてもらえれば最高です。

 

― では最後に、この流れで今後の活動というか、今回のアルバム制作やライブを踏まえた今後の展開について聞かせてください。

野崎:次は6月にJZ Bratでのライブが控えています。

前田:そうなんです。まずは次のライブが楽しみですね!単純に、このバンドでもっとライブをしたいという気持ちは本当に強いので。1回目のライブは、初めてということもあっていつの間にか終わった感じだったので、次回は少し落ち着いて、もうちょっと噛み締めるようにライブができるかな、と。

 

― それは楽しみですね!

野崎:ただ、そこでみんながお客さんを呼べなかったらもう解散、という(笑)

前田:ふー(笑)

 

― どこぞのアイドルグループ的展開だ...(笑)

前田:僕としては、次回のライブのために、さらに1曲、2曲でも新しい曲とかあったらいいやんね、ってすごく思いますけどね。

真砂:前回はライブ用のリハをできなかったから、次回はちゃんとライブに向けたリハも重ねていきましょう!

前田:そうやね。

近藤:うん、たしかに。時間もあるし、さらに作りこみたい感じはあるよね。

平木:前回、BRASSICとして初めてライブで演奏したときに、決まり事だけじゃなくて、決まっていないところからどんどんその場でアレンジすることで予想もしていなかった演奏になる面白さを感じました。だから、私はそういう要素をどんどん広げていきたいと思います。それを繰り返すことによって、また何か新しいものができるんじゃないかと。というのと、やっぱり、おしゃべりがあれだけ上手っていうのは、すごい強みだと思うので...。

一同:(笑)

 

― 最終的にはそこなんだ(笑)

前田:やっぱり締めはそこやったんですね。

栗原:そう、そこで始まって、そこで。

前田:最初からそうやね、ていう(笑)


Patina of Brassic

 

 

栗原健(Takeshi Kurihara)/ Sax

近藤淳也(Junya Kondo)/ Sax

高橋弥歩(Hiromu Takahashi)/ Sax

真砂陽地(Yochi Masago)/ Trumpet

前田大輔(Daisuke Maeda)/ Trombone

平木真由子(Mayuko Hiraki)/ Sousaphone

大竹重寿(Shigekazu Otake)/ Drums