-vol.07-  Yurai  (88888888)

聞き手 / 小川 充

 

■音楽家に進んだのはピアノと歌の教師だったお母さんの影響が大きいのでしょうか?

Yurai:そうですね、小さい頃から歌とピアノがすぐそばにあったので、そうしたところから音楽に目覚めました。

■胎内教育のようにお母さんのお腹の中にいるときから、すでに音楽が聞こえていたとか?

Yurai:はい、母は家で音楽のレッスンをしていたそうなので、お腹の中でそんな音を拾っていたのかもしれません。ラッキーでしたね(笑)。

■ご兄弟はいるんですか?

Yurai:上と下にいます。姉も音楽が好きで、プロではないですけれどジャズ・ピアノをやってました。

■歌を意識したのはいつ頃ですか?

Yurai:小さい頃から好きな曲をカヴァーして歌ったりしていましたね。小学5年生のときに久保田利伸さんが好きになって、アルバム一枚を全部コピーしたりとか。当時はカセットテープの時代だったので、巻き戻しと早送りを繰り返して、全部暗記しました(笑)。ほかに好きだった歌手は杏里さんとか。洋楽に目覚めたのは6から中学に入る頃で、マイケル・ジャクソン、マドンナ、マライア・キャリーなどメジャーどころから入っていきました。その頃は姉がバンドを始めていて、その後結婚するんですけど、その旦那さんがジャズを好きな人で、そうした影響で洋楽も聴くようになっていったんです。あと、ラジオの「アメリカン・トップ40」という番組を聴いたりとか。そうした感じで最初はメジャーなところから始まったのですが、高校のときにダンスを始めて、クラブに行くようになって、だんだんとクラブ系の音楽も聴くようになっていきましたね。

■お母さんがクラシックのピアノの先生だったということで、クラシックの教育を受けたこともあるのでしょうか?

Yurai:それが残念なことに、姉が泣きながらピアノのレッスンを受けているのを幼い頃に見てしまい、「自分は泣きたくないな」と思ってしまったんですね。それで、私は好きな曲があったらピアノで弾く程度で、譜面を読んだりとかそういったレッスンは受けなかったんです。

■そうしてダンスと歌をやりながら、高校卒業後にニューヨークに行きますよね。最初はダンスのレッスンのために行ったのですか? 

Yurai:当時はダンスに夢中で 、ジャズダンスとバレーを3年習った後ストリート・ダンスも始めました。その頃たくさんのダンサーがエリット・フォースやダンス・フージョンに憧れていて、どうせなら直接習いたいなと思ったんです。 そうしてニューヨークに行って、4年ほど住んでましたね。

■久保田利伸をコピーしたり、エリカ・バドゥの曲でコンテストで入賞するなど、最初はR&Bを聴いていて、その後ハウス・ミュージックに傾倒していきます。ハウスにハマったきっかけは?

Yurai:ダンスし始めの頃、1990年代前半はクラブでR&Bが流行っていたので、まずそちらから入りましたね。メアリー・J・ブライジとかよく聴いてました。それで、ニューヨークに行ったらハウス系のクラブによく行くようになって、シェルターとかに遊びに行ってました。そこでマスターズ・アット・ワークとかジョー・クラウゼルとかがDJをしていて。ダンスも好きでしたが、彼らのDJを聴いていると、だんだんと音の方にハマるようになっていったんです。当時のシェルターでは夜中に生でライヴもやっていて、ニューヨリカン・ソウルのライヴにはジョスリン・ブラウンやティト・プエンテが出ていましたね。インディアやジョージ・ベンソンもそうですけど、そうしたライヴを観てますますハマるようになって・・・。今考えればとても貴重な体験だったと思います。

■ジョー・クラウゼルやジェローム・シデンハムなど、ニューヨーク・ハウスの中でもアフリカ、カリブ、ラテン色の濃いものが好きだったようですね。

Yurai:そうですね、エレクトロなものより、太鼓などが入ったオーガニックなものが好きで、血が騒ぎました。

■その頃はイベントやライヴにも出て歌うようになっていったと?

Yurai:ええ、大きなステージではないですが、クラブでのセッションなどにいろいろ参加して、歌う機会を得るようになっていきました。あと、友人のバンドに誘われたりとか。

■そうしてダンスから歌へと自然に移行していったのですね。

Yurai:ダンスはみなフリースタイルというか、自分なりの個性を出すようになっていくのですが、それは習うというよりも、自分のやり方で自分の踊りを持っているというか。で、私はそこまで極めなくても、普通に踊っているだけでいいかなと。あと、ウンミのダンスを観て、「あ、彼女が踊ってくれるのなら私はいいかな」と思って。彼女はマスターズ・アット・ワークなどでも歌っていますけど、とにかくそのアフリカン・ダンスが凄いんです! クラブの設備などを壊すくらい激しく踊っていて(笑)、衝撃的でした。

■歌の方で生きていこうと思ってから、その後世界は変わっていきましたか?

Yurai:ええ、「ゴー・イースト」という全米の日本人が出場できるコンテストに出て、エリカ・バドゥの「Tyrone」を歌って3位に入ったのですが、その頃知り合いのダンサーに紹介してもらって、アミューズ・プロダクションと専属契約を結びました。そこのディレクターの大橋恵子さんという方にYuraiと名付けていただいたんです。私の本名は鷹觜百合(タカノハシ・ユリ)ですが、ユリとユライは似た言葉で、日本語の由来にも通じるから。それから、言葉そのものの響きもいいなということで。

 

■そして、2000年にジフテ・ギオムのレーベルから、「Love Light」という12インチを出しますね。

Yurai:ジフテも恵子さんが紹介してくれたんです。彼はジョー・クラウゼルのレーベルの<Spiritual Life>から「Lakou-A」を出すなど活躍していましたが、自分のレーベルの<Tet Kale>を立ち上げて、第一弾は日本人アーティストをフィーチャーしたいと考えていたそうで、そんなときに出会ったんです。私としても初めてのレコーディング作品となりました。

■その後、2000年の秋に日本へ戻り、東京を拠点に活動します。そこでJazztronikの「Tender Vision」にフィーチャーされるのですが、野崎さんとはそれが初めての出会いだったのですか?

Yurai:そうです、森江統さんという音楽ディレクターの方に紹介していただいて。それで『Numero Uno』を聴かせてもらったのですが、もう最初の曲の鍵盤の響きから凄くて、後ろにひっくり返るくらいでしたね(笑)。

野崎良太(Jazztronik):彼女と初めて会ったとき、「すごく歌がうまい子がいるな」とビックリしましたね。でも、当時の彼女はマネージメント会社の絡みでいろいろな仕事や活動をしていて、Jazztronikに全ての時間を割けるわけではなかったんです。僕としては、もっとJazztronikのような音楽の方向性へ進めばいいのにと思っていたのですが・・・。

Yurai:当時はポップスのグループにも参加していて、でも私自身はそうした方向性にはあまり合わなくて、結構苦しかったんです。そうしたときに野崎さんと出会って、それで自分の好きな音楽をやりたいという気持ちに改めて気づいたんです。そうしてJazztronikに参加させてもらって、7年くらい一緒にやりましたね。ヨーロッパ・ツアーに連れて行ってもらったり、いろいろ思い出があります。

■そのほかにもDe La FunkeやLoop Sessionに参加するなど、クラブ・ジャズ周辺の活動が増えていきます。

Yurai: 当時はイエローやループ、プラグなどのクラブでライヴをやっていましたが、ループの営業時間外にDJの望月さんがミュージシャンに声を掛けてセッションしているというのを聞いて、ベーシストの知り合いに誘われて遊びに行ってみたら面白くて、それで毎週参加するようになったのがLoop Sessionです。そうして曲も作ってアルバムも作りましたね。

■そのアルバム『Bad Soup Hidden』は、インコグニートのブルーイやマーク・ド・クライヴ=ローもゲスト参加するなど、とても豪華なものですね。

Yurai:望月さんのつてで彼らは参加してくれたのですが、ブルーイはとても優しい方で、曲もあっという間に作り上げて、「こんなのはどう」と言ってくれたり。マークの曲は拍子がとても難しい作品だったのですが、そこが逆に面白くて、今でもときどきライヴでトライすることがありますね。

■ブルーイやマークもそうですが、2000年代半ばにはサックス奏者の神崎ひさあきさん、キーボード奏者の堀越昭宏さんのXSなど、ジャズ・ミュージシャンとの交流が生まれます。この頃はジャズを意識したヴォーカル・スタイルになっていったのでしょうか?

Yurai:特にジャズ・ヴォーカルを意識したのではないですね。私はそもそもジャズ・シンガーを目指していたわけではないのですが、ジャズの中にもいいなと思う曲、歌っていて楽しいなと感じる曲はあるので、そうした部分からジャズに接するようになっていきました。ジャンルで音楽を分けて聴かないので、自分の好きな音楽の中にたまたまジャズの曲もあったという感じですか。マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなど王道のものも聴きましたが、ロイ・エアーズの作品が特に好きでした。ジャズ系のシンガーではアンディ・ベイ、テリー・キャリアー、最近の人だとグレッチェン・パーラトが好きですね。ジョー・クラウゼルがリミックスしていたカサンドラ・ウィルソンもよく聴いてました。でも、ジャズの人とやって感じたのは、ジャズ・ヴォーカルは難しくて奥が深いということですね。

 

■今回の『88888888(無限大)』はYuraiさんにとって初めてのソロ・アルバムにあたると思いますが、どのようなきっかけで作ることになりましたか?

Yurai:去年の秋くらいに野崎さんから、「どう、やってみたら」と声をかけられて。

野崎良太:全くひとりで完結するようなソロ・アルバムをやってみたら面白いんじゃないかなと。僕が<Musilogue>を始めて、そのレーベル・カラーに彼女の歌というか声はとても合うんじゃないかなと思っていたんです。それから彼女のことは昔から知っていて、僕が思いつかないようなコーラス・ワークをやったりするのを見てきているけど、たとえばJazztronikでやるときなどは僕の方や和音楽器に合わせる必要が出てくる。でも、ひとりでやるなら誰にも合わせる必要がなくて、そんな誰も思いつかないようなコーラスも自由にできるんじゃないかなと、勧めてみたわけです。

■最初からアカペラの多重録音で作ろうと考えたのですか?

野崎良太:最初は知り合いのエレキ・チェロと組ませたらどうかとも考えましたが、でもそれもいらないなと。彼女のほかに楽器は何も入れずに、アカペラでやるのが一番いいんじゃないかと思いましたね。

Yurai:でも、私自身は最初はアカペラでやるということを理解していなくて、デモ曲とかも楽器が入る想定で作り始めていましたね(笑)。

■アルバム・タイトルにはどのような意味があるのでしょうか?

Yurai:私はヨガが大好きなのですが、ヨガをやっているととても心が落ち着くし、安らぐし、前向きになって、集中力もつくんです。そういったエネルギーを出せればなという気持ちがタイトルに繋がっています。それから縁起がいいということもありますね。8というのは縁起のいい数字で、それを8個並べたら無限大のパワーが出せるんじゃないかと。

■アルバム全体のコンセプトやイメージは何か決めて作っていきましたか?

Yurai:いえ、特に決めずに、自分の思うがままに作っていった感じです。

野崎良太:ある日、突然大量のデモ曲がメールで送られてきて、びっくりしたことを覚えています(笑)。

■作曲はどのように行なっているのですか?

Yurai:家のiMacにLogicが入っていて、それで大体の作業をやっています。私は楽器をあまり上手に弾けるわけではないのですが、Logicにそのヘタな鍵盤を入れたりとか。それと、思いついたらiPhoneに録音したりと。あと、自分の大好きな曲をサンプリングして、そうしてループさせたものに自分の歌を乗せてみたりとか。そういったものをどんどんLogicに入れていって、それがまとまっていく中から曲が生まれるという感じです。

■作品コメントとして「Yuraiの作り上げるハーモニーというのは、楽譜にできない・・・」とありますが、実際に楽譜などは用いずに作曲しているのですか?

Yurai:ええ、私は楽譜を書くことができないので・・・でも、今回はひとりで全てやるから問題はなかったです。今回、最初の段階でサンプリングしたり、参考にしたのは、トニー・アレン、ミシェル・ンデゲオチェロ、ジャザノヴァ、ドウェレ、伊藤大輔さんの作品から、 <Musilogue>からアルバムを出している箏奏者紅雪さんの音 、4ヒーローの「Hold It Down」のバグズ・イン・ジ・アティックのリミックスだったりするのですが、その後アカペラというイメージがわかってからは、野崎さんに教えてもらったオーラ・シュミットというイギリスのアーティストの曲も参考にしています。

野崎良太:オーラ・シュミットはたまたまbandcampで見つけたアーティストで、有名な人ではないのですが、彼女もアカペラの多重録音だけで作品を作っているので、これは聴かせた方がいいかなと思いました。

Yurai:あと、<Musilogue>からアルバムを出している飛鶴(ヒヅル)という和楽器のユニットがあって、そこに私もコーラスで参加しているのですが、その中にはアルバム未収録のセッションもあって、そのアカペラ部分を改めて使ったりしています。「Here comes your time」と「streamline」がそれです。「That's What I like」は15年以上前に作ったもので、ミキサーの中に直接録音して保管していたのですが、今回それも再現しています。

■「八咫烏(熊野古道巡礼) Yatagarasu - Pilgrimage of Kumano Kodo」「Minelva」「Moonstone」などのタイトルにあるように、全体的にスピリチュアルというか神秘的な世界が中心となっていますね。「Yatagarasu」は実際に熊野古道を歩いてイメージが湧いてきた曲ですか?

Yurai:ええ、熊野古道は去年旅行で行きまして、2000年以上昔からある古い森を見たり、復活の神様の神社にお参りしました。そこで感じた神秘的なパワーに癒されて、自然に生まれてきた曲です。

■ヨガもやられているということで、そうしたオーガニックでナチュラルなものも作品には反映されているのでしょうか?

Yurai:そう思いますね。そういった作品にしたかったですし。あと、アルバムを作るにあたっていろいろな本を買い集めて、そうした中にイギリスのSF作家のジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』という作品があって、その中に登場する星の名前から「Minelva」を曲名につけました。「Moonstone」は私の誕生石でもありますが、いろいろ本などで調べると神秘的な力を持つものだと知って、そうしたところからもインスピレーションを得ています。

■歌詞のある曲、歌詞のない曲が混在して、抽象的なことを歌っている曲が多いと思いますが、歌詞には主にどのようなメッセージがあるのでしょうか?

Yurai:前向きで、ポジティヴで、良い方向を向いているもの、平和を願うものなどですかね。私の場合、最初に歌詞を作ってから曲をつけるパターンと、曲ができてから歌詞をつけるパターンといろいろですが、たとえば「Here comes your time」は私の祖父の家にあった仏間からインスピレーションを受けて歌詞が生まれた曲ですね。祖父はとても信心深い人で、小さい頃に家に泊まったりすると、夜の窓に当たる笹の音とか、少し怖いけれどとても霊的なものに聞こえてきて。そうした不思議な光景が膨らんでいって曲になりました。

■何だかジブリ映画のようですね(笑)。ご自身の宗教的な部分も作品には繋がっているのでしょうか?

Yurai:私は特定の宗教には入っていませんが、神様やスピリチュアルなものの存在は信じていて、そういったところは作品の中に入っているかもしれませんね。

■歌詞のない歌は、逆にそれゆえの難しさがあると思います。たとえば「怒(Do)」ではどのような感情を伝えようとしているのでしょう?

Yurai:私は歌とは別の仕事も持っているのですが、あるときに上司から怒られたことがあって、でもそれはひどく理不尽な叱られ方で・・・そうしたときに沸いた怒りを込めた曲です(笑)。

野崎良太:自然界の人間に対する怒りとか、そういったものかと思ってたら、実は上司に対する怒りだったという(笑)。最初、この曲の中で雷の音のSEを入れて怒りの感情を表現したいという提案があったのですけど、僕はさすがにそれはやめたらと言いましたね(笑)。

■でも、この曲自体はとても穏やかなイメージで、そういった怒りが基になっているとはわからないですよね。

Yurai:怒りを音楽に転換するというポジティヴな曲なんです(笑)。私、カラオケでホリー・コールの「Calling You」を歌うのですが、サビの部分はあの曲の叫ぶようなところもインスピレーションとなっていますね。穏やかというのは、私も出来上がったものを聴いて驚いたくらいで、エンジニアの池田(新治郎)さんがきれいにまとめていただいたおかげですね。池田さんには本当に助けていただいて、私がスタジオ制作で弱気になっていると、いつも励ましてくれました。

■「AK2」はジャズにおけるスキャットを意識した作品ですね。このアルバムでジャズ・ヴォーカルを意識したところはありますか?

Yurai:う~ん、特にジャズ・ヴォーカルを意識したわけではなくて、アカペラを意識して最初に作曲していって、その楽しさが思わず出てしまった曲ですね。「AK2」というのはアカペラの略でつけようとしたのですが、本当なら「AC」となるのを間違えてしまって(笑)・・・でも、まあこれでいいかとつけました。

■「Affirmation」ではポエトリー・リーディング、「streamline」ではヒューマン・ビートボックス風のヴォイスと、ヴォーカルといってもいろいろなスタイルに挑戦していますね。そうした意味でも『88888888』は歌や声のいろいろな可能性にトライしたものと言えますか?

Yurai:「Affirmation」はアーシュラ・ラッカーのスポークン・ワードの歌にインスパイアされたのですが、私にとってレコーディング自体がトライそのものでしたね。たとえば私の声でベース・ラインをまず作って、それを池田さんがトラックに入れて、その上で別の声を出して、それをまた別のトラックに入れるという地道な作業の繰り返しで。

野崎良太:僕もスタジオを見に行ったことがありますけど、本当に忍耐力が必要な作業風景でしたね(笑)。8つのラインに全部別々の声を用意していくのかな。だから、最初からYuraiの中に明確な完成形のヴィジョンがないとできないと思う。

■伴奏がない状態では自分で音程とかピッチを作って、それをコントロールしていかなければならないので、より難しいですよね。

Yurai:そうですね、難しさはもちろんありますが、でもアカペラだからこそできる自由さもあって、自分でもこういったことができるとは思ってもみませんでした。「streamline」もヒューマン・ビートボックスを狙ったわけではないのですが、リズム・セクションとか声の役割分担をしていくうちにああいった形になったんです。ほかにもラッパをイメージした声があったり、ウッド・ベースとか、声を楽器に見立てたところはいろいろあります。

野崎良太:ピアノなどの純正律でない独特なところが歌のハーモニーにはあって、それはこうしたアカペラであるからこそ出せるものなんだよね。

 

■<Musilogue>はアンビエントを意識した作品が多く、この『88888888』はまさにそうしたレーベル・カラーを表わしたアルバムです。制作にあたって、そうしたアンビエントを意識した点はありますか? また、Yuraiさんにとってのアンビエントとは?

Yurai:<Musilogue>がアンビエントを意識しているとは知りませんでした(笑)。私自身もこのアルバムでアンビエントを意識したことはありません。できあがったら、こうなっていたというか。

野崎良太:彼女は意識していなかったかもしれないけど、ひとりでアルバムを作ったらスピリチュアルなテイストでアンビエント的なものになるだろうと、そういった確信めいたものは僕の中にありましたね。敢えてそういったことは彼女には言わなかったけど。

■「Moonstone」での波の音のSEなど、全体的に自然を感じさせるアルバムでもあります。自然やオーガニックなテイストは意識の中にあったのでしょうか?

Yurai:私は北新宿に住んでいるのですが、殺伐とした自然とは程遠い風景で、だからアルバムを作るにあたって自然の音を集めたCDをいろいろ買ってきて、そういったものを流しながらイメージをしていきましたね。たとえば「ハワイのパワー・スポット10選」とか。波の音、雨や雷の音、熊野古道で録音した木の葉の音や虫の声とか、そういったものを聴いていると、とても安心するし、癒されるし・・・レコーディングのときもそうした自然の音のSEを混ぜるようにしましたね。ヨガのスタジオでも鳥のさえずりがBGMで流されたりすることがあるのですが、それがとても気持ちよくて、体も安らぐし、私のアルバムもそうした効果が出せればいいなと思ったところはあります。

■アルバムには日本の民謡やわらべ歌などに繋がるメロディやハーモニーがあると思いますが、実際にYuraiさんの生まれ故郷である山形や東北地方の唄や原風景からインスピレーションを受けたところはありますか?

Yurai:「streamline」がそうですかね。この歌のコーラスは「エ~ン、ヤア~、エ~」と、最上川舟唄に通じるかもしれないです。あと、「Here comes your time」は祖父の家だったりと、そういった幼い頃の記憶に結びついているところがあるかもしれないです。和ということに関しては、飛鶴にかかわったときはそういったイメージだったので、「Here comes your time」と「streamline」にはことさらそういったテイストが出ているのかもしれません。

■和的なイメージの一方で、アフリカ音楽のリズムを感じさせるところがあったり、キューバの賛美歌のサンテリアとか、ブルガリアン・ヴォイス、沖縄の島唄に繋がるところも感じます。広義でのワールド・ミュージックを感じさせる、またはそうした民族音楽を融合した一種の無国籍感があるというか。そうしたワールド・ミュージックについての意識はいかがですか?

Yurai:う~ん、ブルガリアン・ヴォイスについてはよく知らないんです。島唄は好きでカラオケでもよく歌いますが、このアルバムに取り入れようとは思っていなかったです。

野崎良太:でも、ブルガリアン・ヴォイスを知らなくて、それができあがったらブルガリアン・ヴォイスに通じるような作品になっているというのが、彼女の凄いところだよね。

Yurai:アフリカのテイストについては、ジョー・クラウゼルとかジフテ・ギオムなどの影響もそうですが、アフリカン・ダンスにもとてもハマっていたので、それからきているのかもしれないです。ニューヨークにアフリカン・センターというところがあって、アフリカのいろいろな国のいろいろな民族が集まってきていて、それぞれの異なるスタイルやリズムで踊っていたんです。生の太鼓で踊るんですけど、そこに私もよく通っていて、そこで得たものを出せたらいいなと思ったところはあります。ニューヨークではアフリカ音楽以外にも、サルサなどラテン系からブラジルのカポエラに触れる機会もあったし、あとクラブ・ミュージックを聴くようになってからは、ジャイルス・ピーターソンのようなDJが紹介している民族音楽も聴いていたので、そうした部分が自分の中での養分となっているかもしれないです。

 

■最後にアルバムで聴いてもらいたいところ、伝えたいところをお願いします。

Yurai:アカペラという、自分でも思いがけないものに挑戦したアルバムですが、いいエネルギーを一杯込めて作りました。時間帯では寝る前とかがいいのかな、これを聴いてちょっと栄養にしてもらえたら嬉しいです。


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-Musician-

Yurai / Vocal